電気自動車は「支えあう」公共インフラ


3月9日と10日、久しぶりに筆者の地元「札幌」へ帰省した。「なぜこの時期に?」というのは、プライベートの話しなので置いといて…。

今回のタイトル“電気自動車は「支えあう」公共インフラ”ということだが、厚かましくも「雪国と言えば?」の質問には、恐らく3割近くは「北海道」との回答が得られるであろう。時々、本州(道民は内地とも呼ぶ)の人からは、「よくあんな所住めるな」と「住んでみたい」の両極端の反応がある。話しを戻そう。雪国とは豪雪地帯を指し、寒い冬は近所や親戚に学生ボランティアなど「支えあい」生活を送る。

昨年9月6日に発生した「平成30年北海道胆振東部地震」の際に、“神対応”と呼ばれ、一躍有名になったとある企業があった。それは北海道でコンビニエンスストアを展開する「セイコーマート(株式会社セコマ)」である。一部地域を除いては、北海道にしかない“セコマ(「セイコマ」とも略す。)”だが、特色は地域性だけではない。「日本生産性本部 サービス産業生産性協議会」が発表しているコンビニ各社の“顧客満足度”では、2015年を除き、ここ数年『1位』を達成し続けている。しかも24時間営業ではない店舗が大半。その強さは、味にこだわる店内調理『HOT CHEF(ホットシェフ)』や、生鮮食品のコストパフォーマンスが主な要因である。

※店内調理の惣菜提供『HOT CHEF(ホットシェフ)』が人気、店名と並ぶ大きな看板が目印。(セイコーマート厚別西2条店)

セイコーマートは、原材料を生産者から直接調達し、製造・物流・販売を一貫して自社で行っているため、種類が豊富でコストパフォーマンスの高い惣菜や生鮮食品を提供できる、いわば「6次産業化 *1」の2~3次に特化している。

“顧客満足度が高いセコマ”だが、昨年の地震発生時の対応が、さらに『顧客との信頼関係』をより固いものにした。

その対応とは、全域で発生した停電『ブラックアウト』時に、災害用に配備していた「非常用電源キット」を使い、自動車のシガーソケットから、主にレジなどの一部機器に電力を供給し、営業を続けたことだった。キャッシュレス化へ社会が移行する中、非常時の電源確保は事業継続と顧客からの信頼において重要な要素となる。さらに、店内調理の炊飯釜はガス式を採用していたため、暖かいご飯を供給することができた。冬になると思い出す“暖かいだけで「幸せな気持ち」になる”という感覚。寒ければ寒いほど。

それにしても、従業員も被災者である。「支えあう」というのが、自然にできるのは現代においては貴重だと感じる。

残念ながら、シガーソケットの電力では、冷蔵庫・冷凍庫の維持は出来なかった。アイスクリームなどは無償で提供する判断も下された、論理的で臨機応変な対応も社内文化なのだろうか。

コンビニエンスストアは、2017年に電気・ガス・通信・鉄道に次いで、災害時の「指定公共機関」になっていた。また、この時に日産自動車は電気自動車(EV)「LEAF(リーフ)」を停電が解消される間の電源として貸出していた。

そして、今年2月27日に「セイコーマート」を運営する「株式会社セコマ」と、日産自動車・道内の日産販売会社7社は、『災害時における電力供給に関する協定』を締結した。

地震発生時、両者の行動は災害時に電力の必要性を認識し、電力供給のインターフェース「V2H機器 *2」の導入とセコマが購入した『LEAF e+(62kWh)』及び日産で試乗車の電気自動車(EV)を停電時に無償貸与し備えるというもの。

この協定の第1弾店舗である「セイコーマート厚別西2条店」には、三菱電機製のEV用パワーコンディショナ「SMART V2H(EVP-SS60B3-Y7)」、(自立・連系運転時共に)6kWの電力を供給できるものが設置されていた。

先日、農水省は大規模災害に備え『3日~1週間分』の食料備蓄を呼びかける活動を拡大すると発表したが、状況によっては、3日間の停電も十分にあり得る話。山間部はもっと長い期間の停電も考えられる。2020年代に向け、電気自動車(EV)の電池容量は大型化に進んでいるが、それでさえ3日間はギリギリだ。一部とは言え、店舗機能を維持しようとするなら、数台レベルでは到底、電力は不足するだろう。

また、依然として高コストの火力発電への依存度が高く、低コストで環境負荷の少ない再生可能エネルギーの導入が必要だ。東京電力などによる「VPP *2」の実証実験においても、電気自動車(EV)などの蓄電池と「V2G技術 *2」は、電力系統を安定化させることに有効であると実証実験の成果を発表した。

もっと、社会全体として電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV・PHV)への乗り換えを促進することで「電力コストの低減(自由取引)」「防災・減災(生活維持)」「エネルギーの自給自足(安全保障)」などに良い影響を与え、私たちの暮らしも豊かになることは言うまでもない。

最後に私が伝えたいことは、別に地元の有力店だからとか、好きな車を作っているメーカーだからという事ではなく、災害が多い日本に住む国民として、日常生活が第一なのは当然だが、商品やサービスに大きな差が無いなら、万が一を考えて行動している人や企業に対しても、優遇や消費という形で「支えあう」ということに少し意識を向けてみたり、実践してみれば、世界が少し良い方向に向かうのではと思う。

本当に大規模災害など究極の場面では“困ったら、お互い様”という時に「支えあう」ことができるか。現在の文明では、勝つことは不可能な自然相手に試されている時期なのかもしれない。

*1)「6次産業化」とは?
1次産業(農業、水産業など)を営んでいるものが、2次産業(食品加工など)と3次産業(流通、販売など)を行い、エンドユーザーへの提供まで、ワンストップで提供することによる「ブランド確立」や「所得向上」を目指し、1次産業の「競争力の向上」や「後継者の育成」などを推進する取組を指す。

*2)「V2X(V2H、V2B、V2G)」「VPP」とは?
V2Xとは『Vehicle to X』の略で、自動車とのやりとりを行う技術の総称(X)であり、住宅(Home)との場合は『V2H』、ビル(Building)との場合は『V2B』、電力網(Grid)との場合は『V2G』といった具合にXの部分が相手に応じて変化する。VPPとは、Virtual Power Plant(バーチャルパワープラント)の略で、各地に点在する再エネ発電所・蓄電池・デマンドレスポンス等の省エネ機器をIoTにより制御し、電力エネルギー利用の最適化をはかり、仮想(バーチャル)空間上で、あたかも1つの発電所(パワープラント)のように機能させること。

 



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