【次世代エネルギーインフラ講座】ESG投資の波及により変わる民間企業と地方自治体の『お金のはなし』


前回の次世代エネルギーインフラ講座は、『低炭素社会に向けた、日本国内外の動向(2018年春)』をお届けしました。
今回は、昨年から次第に強い影響力を及ぼし始めている『ESG投資』にまつわる内容をお届けします。

ESG投資とは?

個人投資家や金融・保険・年金などの機関投資家が企業に対して投資先を判断する指標のひとつに、売上高・経費・利益・資産・負債といった従来の財務項目に加え、環境(E:Environment)・社会問題(S:Social)・企業統治(G:corporate Governance)といった非財務項目に対して改善活動の取組内容を重視して行う投資を指し、2006年に提唱されたPRI(責任投資原則)でもESG情報を考慮するよう求められています。

前回の『低炭素社会に向けた、日本国内外の動向(2018年春)』では主に環境と社会問題に触れてきました。
1980年代以降の気象災害激化が、18世紀半ばから起こった産業革命によるCo2濃度の急上昇が原因とされ、2015年12月12日にフランスで行われたCOP21(第21回 気候変動枠組条約締結国会議)で採択された気候変動抑制に関する国際協定(通常:パリ協定)を起因とした国内外の取組みをご紹介しました。

今回は、主に企業統治(コーポレートガバナンス:Corporate Governance)に強い影響を与える金融(ファイナンス:Finance)の視点から民間企業及び地方自治体に与える『お金のはなし』をご紹介します。

なぜ、ESG投資の話に地方自治体が出てくるのか?

答えは単純で、地方公共団体の歳入は国民の大半が勤めている『民間企業の法人税や固定資産税等』と企業から受け取る『報酬(給与)の所得税等に加え消費税等』が大半を占めるからです。ESGの流れに乗り遅れ、主にグローバル企業への投資撤退が起こった場合、事業の悪化などにより企業からは法人税等が、従業員がリストラにより失職すると所得税に加え、消費悪化による消費税等の減収が想定されます。

現実には、世界を見渡しても急激な人口減少が想定される日本、移民問題を含めた人口増加による雇用環境の悪化はヨーロッパでは大問題に発展しつつあり、アメリカファーストで自国産業の再興を目指すなど国家レベルでは仕事の奪い合いが起こっており、AIや自動化の波や規制に関税の掛け合いなどが起こっています。

これまでも言ってきたように、ヨーロッパの排気ガス規制と巨大市場である中国・インドのEVシフトにより、各国の自動車メーカーは日本の主力産業からのゲームチェンジを狙っており、操作のできない為替や関税要素があり、そこにESG対応などが遅れると二重苦、三重苦から減収・減益となり、投資家からの投資撤退も十分あり得ます。

先日の日本経済新聞でも報じられていましたが、中国の環境規制に日本企業がついていけていないのが明るみに出ました。今や日本は省エネ技術では世界有数かもしれませんが、環境対策という点においては後進国というのが世界共通の認識になりつつあります。アメ車の燃費の悪さを馬鹿にしていたのがブーメランのように返ってきたのです。

先日の徳島市観光協会の破産報道(市観光協会は高裁へ即時抗告したが棄却)で開催が危惧されていた地元の重要な伝統芸能・文化である阿波おどりも自治体の一般会計捻出分と地元の徳島新聞社からの寄付金で難を逃れようとしていますが、あくまで自治体や企業の資金に余裕があったからの話です。

ですが、幸運にも地方公共団体には自力で財源を手にしながら、歳出圧縮する手段が残されています。
やはり再生可能エネルギーなのです。詳細は後程説明しましょう。

税金には大きく国税と地方税があります。国税は所得税や法人税に消費税等が該当し、地方税は固定資産税や地方消費税(消費税の一部)などがそれに該当します。
2017年度に国からの地方交付税を受けずに運営した自治体は約1,700団体中わずか76団体のみ。少子高齢化が進み、財源確保が難しくなっており、今ベビーブームが起きても社会人になるには20年近くかかります。

アベノミクスによる株価上昇により経済は持ち直していると言われていますが、その恩恵は一部の上場企業のみであり、ましてや中小企業や地方までは行き渡っていないと聞きます。

話がずれたので元に戻しましょう。

企業統治(コーポレートガバナンス)について

ESGのうち、G:企業統治(コーポレートガバナンス)ですが、民間企業のファイナンスという点では社内外の取締役によるチェックで経営者が正しい判断を行い経営を行っているかどうかを見極める必要があり、そうでなければ、場合によっては解任のアクションを取れる状態を『コーポレートガバナンスが効いている』と言います。

コーポレートガバナンスが注目されている背景には、株式保有の形が急速に変わってきているからです。バブル崩壊以前は、企業の株式の大半は取引のある会社や金融機関の間で相互に保有していた『持ち合い』という文化が根付いており、互いの経営には口を出さない通称『物言わぬ株主』が一般的でした。

バブル崩壊やリーマンショックなどといった数々の経済恐慌により、企業の体力が低下し、その関係が次第に解消され『物言う株主』である外国人投資家(個人・銀行・保険・年金など)による日本企業の株式保有が急速に広まり、今では東証一部上場企業の大半では半数以上が外国人投資家であることは珍しくもない状態です。

では、投資家の判断基準はというと、決算書から導かれる様々な数値・指標(※後程、簡単に説明)とESG要素であり、投資家への対話や情報公開等の指針として『伊藤レポート』と呼ばれる経済産業省が主導したプロジェクト『持続的成長への競争力とインセンティブ ~企業と投資家の望ましい関係構築~』の最終報告書や金融庁主導の責任ある機関投資家の諸原則『日本版スチュワードシップ・コード ~投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために~』及び『コーポレートガバナンス・コード』の2つの指針(コード)などこれらが基本軸となり、企業と投資家を繋ぐ『価値協創ガイダンス』が策定されました。

Solar PPAの特長

先ほど、『幸運にも地方自治体には、自力で財源を手にしながら、歳出圧縮する手段が残されている』と述べました。
現在、とある自治体が所有する公共施設の屋根へ太陽光発電設備の設置を要望されており、約30施設ほどに2MW以上の規模になる予定です。1年間で約100万円以上の行政財産使用料を手にでき、なおかつ莫大な償却資産税(正確には固定資産税)と合わせて多額の税収を得ることができます。

Solar PPA事業では、10年経過後は発電設備を無償譲渡するので、11年目以降に発電設備が発電し、自家消費した分の電気代は0円となり、余った電気は売ることができる市場が今後待っているでしょう。

10年目以降に莫大な経済効果を生むのが『Solar PPA』の特長であり、最近は各所の担当者から「導入しない理由は無い!」との声を聞くことも少しずつ出始めています。

非化石価値取引市場とは?

先日公表になった『非化石価値取引市場』の初の入札結果は670万円分取引されました。
『非化石価値取引市場』とは、固定価格買取制度(FIT法)で認定された太陽光発電に代表される再生可能エネルギーが発電した電力の非化石(Co2を排出していない)という価値を一定期間分の発電電力量に対して入札(オークション)を行い、小売電気事業者が応札し、事業者が販売する電力に非化石価値を付与して電気を販売できる制度のことで、非化石証明書の取得により得られた収益は再エネ賦課金の原資に充てられ国民負担が減ることが期待されます。

RE100のロゴ

ESG要素の代表例はRE100の『事業運営を100%再生可能エネルギーで調達することを目標』に掲げる企業が参加する国際ビジネスイニシアチブのことで、日本ではリコー、積水ハウス、アスクル、大和ハウス工業、ワタミ、イオン、城南信用金庫の7社が加盟しています。Apple社やGoogle社は取引先にも加盟を求めており、故にESGに乗り遅れると仕事が減ることに繋がります。日本の事情を考えると将来的にはRE100達成要件に非化石証明書の取得が加わらないと厳しくなります。日本の総使用電力に占める再生可能エネルギーの割合は2016年時点でわずか14.5%とごく僅かな取引量を企業は勝ち取らないと事業継続性が危うくなります。

パリ協定で日本が公約した内容を実行するには、民間企業だけでなく地方公共団体も再エネ設備の導入が必要不可欠となってきますが思うようには進んでいません。導入費用の問題をクリアできるのもSolar PPAであり、建物の老朽化や耐震強度不安ならばカーポート型の用意もあります。
無償設置で再エネ設備を拡大し、国内産業が受けるであろうこれらの脅威から守りながらも、地方公共団体の財源確保と歳出抑制を行いながらパリ協定の公約を達成するには今からの取組みが必要です。

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