【次世代エネルギーインフラ講座】低炭素社会に向けた、日本国内外の動向(2018年春)


今回は、2018年2月末~3月初にかけて行われた、各説明会やシンポジウムの内容を集約してご紹介します。

参加した説明会

環境省:環境配慮契約法説明会
環境省:グリーンボンド支援施策等に関する説明会
公益財団法人自然エネルギー財団:国際シンポジウムREvision2018 自然エネルギー大量導入が世界を変える
経済産業省・環境省・国土交通省:ZEH等3省連携事業合同説明会

 

世界および日本国内の自然環境の現実

2015年11月30日~12月12日にかけてフランスで行われたCOP21(第21回 気候変動枠組条約締結国会議)で採択された、気候変動抑制に関する国際協定(パリ協定)では、産業革命前からの世界平均気温上昇を2度未満に抑え、加えて1.5度未満を目指すとなったが、現実は温暖化・寒冷化・自然災害激化といった現象が発生しており、温暖化のみの注目は間違っていることが明らかになってきている。

だが、温暖化・寒冷化・自然災害激化は進んでおり、これを改善する必要があるのには変わりは無く、現在の着眼点は下図にあるように、急激な温室効果ガス(Co2など)の急上昇を抑制させることを目指している。

【出典】アメリカ航空宇宙局(NASA)ホームページ https://climate.nasa.gov/evidence/

パリ協定を離脱表明した、アメリカの航空宇宙局が公表している結果なので、信憑性が高く、18世紀半ばから起こった産業革命を機に、過去65万年間超えることがなかったCo2濃度になっている。

ちなみに、アメリカ政府はパリ協定離脱を表明したが、各自治体や企業は政府を批判し活動を継続している。

主な活動例

・U.S. Climate Alliance(アメリカ気候同盟)
・We Are Still In(我々はまだパリ協定に留まっている)
・America’s Pledge(アメリカの誓約)

 

一方、日本国内ではどのような事象が起こっているのかというと、

【出典】気象庁、気候変動監視レポート2016

気象庁が公表している気候変動監視レポートでは、温暖・寒冷の幅があるが年平均気温が上昇傾向であり、ZEH等3省連携事業合同説明会において、環境省配布資料(地球温暖化対策の動向と住宅の低炭素化に向けた取組について)では、以下の事象が挙げられている。

  • 米の白濁化やみかんの浮皮症による品質低下(高温・多雨)
  • 珊瑚の白化や農産物の食害(高温・少雪)
  • 熱中症患者増加や感染症媒介生物の北上(高温)
  • 洪水発生やゲリラ豪雨(短時間強雨)の増加

グリーンボンド支援施策等に関する説明会において、環境省配布資料(ESG投資の国内外の潮流について)では、気象災害の激化傾向として1980年代以降、洪水や嵐等の気象災害が報告件数、被害額ともに増加しており、また、2016年の国内土砂災害発生件数は過去10年間で最大の1,492件(地震の影響を除く)となり、2017年12月26日の速報値では、1,462件と、依然として高い数値を記録している。

【出典】World Risk Report 2016

このように、生活・経済・衛生・安全・文化など、多方面においてマイナスの側面が表面化している。

 

Co2削減を背景とした経済・金融・産業構造の変革

グリーンボンド支援施策等に関する説明会において、環境省配布資料(ESG投資の国内外の潮流について)では、産業革命前からの気温上昇が2100年までに2.5℃に上昇した場合の金融資産損失額が250兆円(最悪のシナリオの場合は2400兆円)と予測する研究結果が出ている。

また、自然災害による保険料率の悪化の例として、以下の項目を挙げている。

  • 住宅総合保険の参考純率(保険料率の算定基準値)を平均で3.5%引き上げ(自然災害など)
  • 火災保険の参考純率の適用可能な保険期間が36年から10年に短縮(温暖化によるもの)

パリ協定を背景に、1861年-1880年(産業革命時期)からの気温上昇を66%以上の確率で2℃抑えるには、2011年以降の人為起源の累積Co2排出量を約1兆トンに抑える必要がある(カーボンバジェット:炭素制約)

≪全許容排出量:3兆トン≫ - ≪既出排出量:1.9兆トン≫ = ≪許容排出量:1.1兆トン≫

≪世界の化石燃料のうち可採埋蔵量に含まれるCo2排出量:2.9兆トン≫ - ≪許容排出量:1.1兆トン≫
 = ≪パリ協定を達成するために利用できない化石燃料の排出量:1.8兆トン≫

この排出することができない1.8兆トン分の化石燃料を「ストランデッドアセット(座礁資産)」と呼び、化石燃料を採掘・販売をおこなう企業への投資リスクと世界の金融機関や投資家が判断し、投資を引き上げている流れを「ダイベストメント」と呼び、誓約した投資家資産総額は560兆円に達している。

これらのことから、Co2排出削減と経済・金融・産業は変革せざるを得ない状況になっており、既に動いており日本国内でも最近は「ESG投資」という言葉をよく聞くようになってきている。

ESG投資とは、「環境:Environment」「社会:Social」「企業統治:Governance」の改善を積極的に活動している企業を重要視して行う投資であり、PRI(責任投資原則)でも投資家に対し企業分析・評価を行う上で長期的な視点を重視し、ESG情報を考慮した投資行動をとることなどを求めている。

現実、アメリカ国内のこのような動きでのGDP(国内総生産額)は日本全体の倍近い額になっており、日本国内でも高いSDGs(持続可能な開発目標)を持たないと経済活動が急速に悪化する可能性が高まっている。

SDGs(持続可能な開発目標)は、全ての国で2030年までに以下の17の目標がある。

『国際シンポジウムREvision2018 自然エネルギー大量導入が世界を変える』では、RE100(事業運営に要する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げている企業連合)に加盟しているRICOH(リコー)によると、RE100参加により他社との連携・協業などが生まれるメリットを受けており、ヨーロッパ5カ国の販売会社ではすでに100%を達成している事業所もあるが、日本国内は制度的な問題もあり、導入進捗が良くない状態とのことで、このままではバリューチェーンから日本企業が外されかねない事態に陥り経済規模が縮小し、所得や雇用の悪化に繋がる可能性を実感しているとのこと。
また、EV(電気自動車)を展開している日産自動車によると、日本・中国・韓国メーカーが優位に立っている蓄電池(バッテリー)製造をヨーロッパ勢がシェアを奪おうと狙っており、差別化の1つとしてWell to Wheel(製造段階から走行時までのライフサイクルにおいて)Co2排出量ゼロのEVを打ち出そうとしている。

RE100の他には、EP100(事業エネルギー効率を倍増させることを目標とする企業連合)、EV100(輸送の電動化により大気汚染や騒音公害を抑制し、気候変動抑制を目標とする企業連合)があり、Japan-CLP(日本気候リーダーズ・パートナーシップ)が企業を支援している。

企業による再生可能エネルギーの導入はもちろん、国や自治体および国民による大量導入を行わないと、特に製造業の消費エネルギーを再生可能エネルギーで賄うのは簡単ではない。日本の生活・経済・産業を守るにも、さらなる再生エネルギーの導入を強く推し進める必要がある。

 

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