【次世代エネルギーインフラ講座】低炭素社会に向けた、日本国内外の動向(2018年春)


海外の取組み内容

ここでは、(公財)自然エネルギー財団主催『国際シンポジウムREvision2018 自然エネルギー大量導入が世界を変える』の内容をご紹介します。

開会挨拶(自然エネルギー財団理事長 トーマス・コーベリエル氏、河野外務大臣)

自然エネルギーはいまや原子力発電よりも多くの電力供給を世界中で担っているが、日本は遅れをとっており、気候変動への取組みは環境だけでなく、経済・開発といったさまざまな分野に対して影響を及ぼしており、外交政策の中でも喫緊の課題である重要な要素。
かつて、日本は自然エネルギー利用のトップランナーだったが、いまや世界各国に後れを取っており、グローバル市場へ進出できていないため、経済規模が縮小してしまったが、その理由の1つとして日本の電力市場は既存の垂直統合型で、古い火力発電に有利な状況であることが挙げられている。要は、既存の大手電力会社独占(発電・送電・小売)で、火力発電の電力を安く供給できるシステムであり、また、送電線管理も大手電力会社が管理しているため、系統接続の割合や費用がブラックボックスでフェアでなく、FIT制度の運用も運用開始期限がないまま放置し、設備認定にも長期間の審査を待たされるため拡大しなかった。

国際金融公社(世界銀行グループ)ダナ・リード・ヤンガー氏 基調講演
  • 自然エネルギーの本格的な大量導入には、入札による価格破壊が必要(日本は発電コストが高い)
  • 2030年までには、グローバルの30%を自然エネルギーがシェアを取る見込み
  • 世界の風力発電は、いまや中国が引っ張っている
  • 太陽エネルギーの利用の初期は日本企業の機器がシェアを占めていたが、今や縮小傾向
  • 2040年までには60%を自然エネルギーが占め、太陽光発電が最大のシェアとなる見込み
  • 中国とインドの電化により、トレンドが変化する
  • 世界の投資金額は、太陽光発電の方が多い
  • CSP(集光型太陽熱発電)は、系統に与える影響が少なく、コストも安いので増えてきている
  • 貧困緩和には電力供給体制が必要
セッション1:加速する世界の自然エネルギー拡大
  • 自然エネルギーの導入コストが下がり、投資額が急増することで更なるコスト削減を目指している
    加速度的な導入が進まない限りはコストダウンしなく、周りから後れを取ることになる。
  • 気候変動によるさまざまな経済損失が生まれているが、自然エネルギー導入による経済効果で穴埋め
    最終的には電気代が0になることが最大の経済効果
  • 輸送部門の電化(EVシフト)が目覚ましく、日本では昼間のスマートチャージング(再エネ充電)が進む
  • 洋上風力とCSPは今後数年で大幅なコストダウンが見込まれる
  • 補助金無しでも屋根上で太陽光発電を自家消費する方が電気代が安くなっている(コンセントパリティ)
    ⇒国や電力会社ではなく、個人・企業・自治体が再エネを独自に導入するようになる
    ⇒すでに裕福な家庭は、自宅でエネルギーミックスを行い、嫌いな電力会社との分断を楽しんでいる
  • 企業が再エネを拡大させるにも、法的な枠組みがベースに無いと難しい
    革新的な施策を打ち出せるかどうかは、その国の成熟度しだい(耳が痛い話)
  • 中国ではGDPが4倍になったが、Co2増加が2倍に抑えられた(日本のエネルギー生産性が低い)
  • 中国は風力・太陽光・水力発電の大量導入を計画、2025年には石炭よりも低コストになる試算
  • サウジアラビアは日本の1/3のオイルを輸出しているが、ポストオイルとして太陽光導入(最適地の1つ)
    トレードオフとして日本企業が太陽光発電を導入しているが、パネルは中国なので恩恵は少ない
セッション2:変動型自然エネルギーがもたらす電力ビジネスの変革
  • 自然エネルギーはチッピングポイント(転換点)を迎えつつある
    ⇒ビジネスの形態を変えないと、生き残れなくなってきている(将来どうあるべきかを考えているか?
    ⇒再エネ導入や省エネが進まないなら、さらなる生産性を上げないと事業継続が難しくなる
  • 再生可能エネルギー市場は3%程度だが、年率20%の伸び率で成長している(投資が増えている)
    ⇒電動化に伴う電力システムの脱炭素化を推し進め、クリーンでお手頃な電力を提供できる
  • 競合他社の電力料金改革により、電気代が0になりつつある国がある(チリを代表に挙げていた)
    ⇒先進国(例:オランダ)では、電力を気に入った人から購入するシステムが運用されている
    価格だけではなく、ブランドストーリーなども重要視して選択することができる
  • 自然エネルギーの台頭により、既存電力会社は事業規模を縮小せざるを得なくなった
    ⇒発送電分離によりさらに加速した(日本では送電網システムがアップデートされていない)
  • 日本は自分自身の強みを知る必要がある(自動車・水素など)
    RMI(ロッキーマウンテン研究所)では、太陽と人体の熱のみで空調を行うシステムを構築しているが、本来、日本はこういったシステム設計が得意なはずだが…
    ⇒太陽光初期にトップランナーだったのに、現状になってしまった失敗をまた繰り返すのか?
セッション3:太陽と風力を日本のグリッドに
  • 日本の自然エネルギー割合は15%程度で、半数以上を水力発電が占める
    だが、石炭火力発電の新増設計画が未だにあるのは日本くらい
  • 世界の太陽光発電では、太陽電池価格は30円台/Wで、発電コストは3円/kWh(トップランナー値)
    ⇒太陽光発電をはじめとした、再生可能エネルギーが基幹電源になれるポテンシャルは十分あり
    太陽光発電のみデマンド(需要家)側が簡単導入可能な自然エネルギー
    いくつかの国では、グリッドパリティを迎えている
  • 風力発電は系統安定化(アンシラリーサービス)が可能な電源
    ⇒従来火力発電が果たしている系統安定化や調整力機能を果たせる(風まかせではない)
    ⇒風車の大型化により、風速の弱い地域での採算が合うようになってきている
    ⇒大型台風が通過する地域でも次々に採用されているので今後は理由にならないようになる
  • 特に電力系統に言えるのが、接続検討でNGになる理由を明確化できていないのが問題
    ⇒分からないからNGと言っているようにしか聞こえない
    ⇒設備認定の申請に時間がかかっているのも同様の問題といえる
  • 日産自動車の試算では、乗用車の10%がEV(電気自動車)になると再エネの出力変動が吸収できる試算
    ⇒V2H/V2BやV2Gなどで変動吸収に貢献することで、EV所有者が利益を得て充電代をペイできるようになる
    ⇒自動車の視点に立つと、ガソリンやディーゼル車よりもEV(電気自動車)の方がエネルギー効率が高い。再エネからの充電を行わなくても、石油を海外から調達し各給油所へ配送する間の輸送ロスが大きく、コンバインド・サイクル方式の火力発電は効率が60%近くあるが、理論値でもガソリンエンジンは30%で、ディーゼルエンジンは40%程度と低く、送電ロスはわずか5%であるため、EVの方が効率が実は良い
    EVは90%を動力とし10%が廃熱としてロスが出るが、エンジンは80%を廃熱ロスとなってしまう。
    今後、再エネの大量導入と電動化が進み、スマートチャージが普及するならば、エネルギー効率は内燃機関が太刀打ちできないほどの効率とクリーン性能になる。
  • 再エネ賦課金は今後、再エネ比率+7~9%で、+約1兆円になる試算(賦課金最大:3.45円/kWh)
    ⇒高度化法により、小売電気事業者(電力販売者)は2030年度には44%の非化石電源(再エネなど)を調達する必要があり、再エネ発電所を持っていることで発電電力に付加価値が生まれるが、反対に販売する電力料金も上昇する可能性がある
    ⇒再エネ賦課金よりも火力発電の燃料価格の方が変動が大きい。実際に2013年⇒2016年の4年間で半分程度まで落ちた。さらに再エネ推進による火力発電の燃料消費が減ることで、賦課金の増大を相殺した。再エネが普及しているのに、元の電気料金が大きく変わらないのは電力会社の利益率を拡大しているだけで、再エネ賦課金の負担は電力を使用する国民全員に分担している(正確には特例があるので公平ではない)
    4年で燃料調達が半額になったということは、その反動がいつ訪れてもおかしくはなく、現実、再エネ推進の昨今、燃料調達に係る長期契約の終了・更新を迎えているのだ。世界の流れから輸入量を増やせるわけでも無いので、調達価格は上昇傾向になると思われる。
閉会辞:自然エネルギー財団 副理事長 末吉氏の挨拶

低炭素社会へ向けての世界各国の取組みのなか、日本だけが明らかに浮いている。また、それを背景に今までの文化が変革している。特に金融と産業構造が顕著であり、今までは利益を出していれば良かったが、低炭素に取り組めない企業は投資対象外となり、すぐさま市場からの撤退を余儀なくされることだろう。今から変わるのが遅いくらいである。

 


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